amori's blog

よろず技術系と趣味関係の雑記です。アニメの比重が高くなってます・・

刑事フォイル「臆病者」(ダンケルク回)

前の記事:
amori.hatenablog.com
で触れた、刑事フォイルのダンケルクに関係する回の録画が、幸いにもまだレコーダーに残ってたので観てみました。

「刑事フォイル」は、第二次世界大戦中のイギリスのヘイスティングズという街を舞台にした刑事ドラマで、大戦初期から終戦後までを時代背景としたシリーズです。

お話は、基本的に街で起こる1話完結の殺人事件の発生と解決という極めてオーソドックスなものですが、その時代の出来事や社会情勢をうまくとりこんだ脚本が実に巧みで毎回とても面白いドラマが展開されます。
(私は最近の放映分から見始めました)

さて、シリーズ第2話(NHKでは前後編の分割で第3回と第4回放送分)の「臆病者」が、件のダンケルク回となります。

正確にはこの回は、親ドイツの人間たちの集まりで起きた殺人事件が本エピソードでして、ダンケルクは直接的には関係していません。事件の容疑者の一人が父と一緒にダンケルクに兵士を救援に行くというエピソードがちょっとあるだけで、その描写もヘイスティングズの港の情景のみです。関係するシーンは全部合わせても5分もないでしょう。

しかし、そのエピソードの挿入はドラマに実に深い余韻をもたらしていました。

1940年5月の戦乱が近づくイギリスのヘイスティングにおける様々な人間模様:

・不安を煽る政治家
・混乱に乗じて悪事を画策するもの
・新聞の情報で情勢を分かったつもりでなお日常にしがみつくもの
・戦争の意味に悩み扇動に乗せられる帰還兵

をベースに、不安が覆う中でまだ日常が保たれているイギリスの様子が描かれています。
そして、話の、終盤に挿入された、ダンケルクから兵士たちを救出してきた漁師が語る、海のすぐ向こうにある本当の戦場の描写は、このエピソードに強いカウンターを与えていました。

その語り口と演出は極めて抑制されたものではありますが、イギリス人の、いやUKそれ自身の記憶と言ってもいいダンケルクの物語と、今回の事件とに接点に持たせることで、本エピソードと時代背景の主客が入れ替わるようなインパクトを感じさせられました。

映画「ダンケルク」を観る前に、これを観ていたならここまでの感想は持てなかっただろうなあ、と思います。

同時に、ツレの「ダンケルク」への評価の厳しさも理解できましたσ(^_^;)

刑事フォイルはNHK-BSで再放送中。オススメです。