amori's blog

よろず技術系と趣味関係の雑記です。アニメの比重が高くなってます・・

正解するカド - ファーストコンタクトの現代化

正解するカドの第2話までの感想で、
「実は人類の世界はバーチャルワールド、いわゆる箱庭宇宙であり、その創造主とのファーストコンタクトのお話」
http://amori.hatenablog.com/entry/2017/04/19/224610
と言い切りましたが、これについてちょっと補足します。

既に書いたようにファーストコンタクトというのは古くて新しいテーマでして、
その大枠である「地球外知性体との遭遇」というのは、古くからの異文化との遭遇として積み重ねられたものの延長でした。

そのテーマは、意思疎通の困難だったり、侵略だったりと、まあ大航海時代での異文化の発見や侵略の歴史から敷衍されたものがメインというのは自然です。

しかし相手が地球外知性体という設定を掘り下げていくと、そもそもそのような知性体との遭遇の発生自体にかなり大きな「イフ」の前提が必要になります。

そして、地球文明にコンタクトできるほど圧倒的な文明の差がある状況でのファーストコンタクトは、一方的な蹂躙か、ただの観察か、になってしまいがちで、両者がガッツリ組み会えるファーストコンタクトの設定を構築するのは中々に困難です。

そんなファーストコンタクトものにブレークスルーをもたらしたアイデアとは、これまた古典の「フェデッセンの宇宙」の箱庭宇宙です。
このコンセプトは数多のバリエーションがあり、ドラエモンでも繰り返し使われているネタなのでSF好き以外でも馴染みあるものでしょう。

この、原点であるところの「フェデッセンの宇宙」が凄いのは、われわれが箱庭宇宙を作れるのであれば、もしかすると我々の宇宙も誰かの箱庭宇宙なのでは?、という視点を既に提示していることです。

そしてこのコンセプトを現代化したのが、イーガンの「クリスタルの夜」(プランク・ダイブ 収録)です。

お話の大まかな流れは、
「ウルトラハイパーな計算デバイス使って、超高速で文明シミュレーションしたら、未来テクノロジーを手に入れられるじゃね?」

「・・なんか文明発展してるみたいだけど、何起きてるかわからんなー。よしインタフェースを作ってクロック下げてコミュニケーションしたろ」

「あー、なんかしくじってなんか滅んだぞ。セーブポイントからやり直し」

「なんとかこちらと意思疎通できるやつまれたわ」

「いうこと聞かなかったらバチあてたるー」

「よしよし、そろそろ新しい物理学にたどり着きそうだぞ」

・・・オチは本編でご確認下さい。

以上でわかりますように、箱庭宇宙の中のバーチャル宇宙への介入というのは、介入される側からすると、宇宙の創造主たる神の出現にに他なりません。
しかし、このシチュエーションがこれまでのファーストコンタクトものと大きく異なるところがあり、神の側はその宇宙の物理法則すら操れるオーバーテクノロジーを持っているにも関わらず、必ずしも箱庭宇宙の全てを意のままにることはできないのです。
それどころか「クリスタルの夜」においては、神の側が箱庭宇宙から知識を得ようと苦労するのです。

このような設定は既に現実のものになりつつあり、Googleのalpha Goは自己学習によってプロ棋士でも理解しがたい戦略を編み出しているのはその端緒でしょう。


正解するカド」が「クリスタルの夜」同様に、この宇宙をバーチャルに作り出した存在(たぶんそれがノヴォ)が、その宇宙内の人間にコンタクトしてきた、というお話と考える理由はいまのところふたつ。

ひとつは「交渉」というキーワード。
超越的な存在が人間に対して相互理解を得て交渉によって何かを得る、という状況をもっともシンプルに設定できるプロットです。

もうひとつは「境界体カド」
これ、まさにノヴォがこちらの世界にコンタクトするインターフェースという意味合いが強いです。
そしてカドに取り込んだ人間たちを外に解放するために一定時間必要という縛りは、シミュレーションのレジュームプロセスの手間を強く連想させますw

カドの出現は、ヴァーチャル宇宙である情報空間への強制割り込みおよび情報の確保であり、カドの内部と外部は不連続な情報処理空間となっているのでしょう。内部強制的に取り込んだ情報体である人間を元の世界にシームレスに復帰させるには、それなりの情報処理リソースが必要であるというのは、ノヴォ側の介入能力の限界の存在が予想されます。

・・・と、2話まで情報で思いっきり妄想を膨らませみました(^_^;)

今後の展開でのポイントは、「交渉」によってノヴォはいったい何を得ようというのか、というところでしょうねえ。

とりあえず「42」という「正解」が出てきたりしないか、第3話が楽しみですw



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