amori's blog

よろず技術系と趣味関係の雑記です。アニメの比重が高くなってます・・

ドラマ「スニッファー」 のカメラワーク

NHKのドラマ「スニッファー」
阿部寛香川照之というアクの強い俳優のバディものという興味に加え、超人的な嗅覚による捜査モノという設定がどのよう描かれるのか興味があって観ています。

超人的な嗅覚というネタのサスペンスはたぶん井上夢人「オルファクトグラム」が先駆的で、未だにこれを凌駕してる作品はないのではないかな、と思ってます。(wowowでドラマ化もされてたはず)

さて、連続ドラマとしてどんな風に仕掛けてくるかなと観てみた初回。
冒頭から絵造りが独特です。

暗めなトーンの色調設計、フィルムっぽい画質、細かいカットわり、手持ちカメラによるユラユラとしたカメラワーク、立体的な字幕挿入、犯行現場の嗅覚イメージにCGイメージ・・

お、なんか海外ドラマっぽいぞ、という感じ。特に冒頭の手持ちゆらゆらなカメラワークはそのスピード感と不安定さで、阿部寛演ずる超嗅覚を持つエキセントリックな捜査コンサルタントのキャラと周りの人間達との温度差を描くうまいつかみの演出でした。
その後のシーンも同様なカメラワークを使っていたので、これはカメラワークに意味づけをしてるんだな、と思いました。

というのも、予知夢の能力者が捜査コンサルタントとして活躍する「ミディアム」というこのドラマの設定によく似た海外ドラマがありまして、この作品では手持ちゆらゆらのカメラワークが映像文法として徹底的してたのです。
基本的に全ての通常シーンは手持ちカメラで、常に微妙にゆらゆらしてます。それほど極端に、例えばブレアウィッチプロジェクトやクローバーフィールドみたいに揺れてるわけでなく、ドキュメント映像っぽい程度です。
ドラマ中できっちりと固定カメラでの映像になるのは主人公が観る予知夢のシーンであり、これは徹底しています。
明らかに夢と分かるシーンもあれば、途中まで現実のシーンと区別がつかなくて、最後にガバッと飛び起きて「夢だったんだ・・」とわかるシーンだったりもします。
この、手持ちと固定の絵の違いというのはカメラワークを意識していなくてもなんとなく無意識に感じられているようで、「ああ夢たったんのか」という目が覚めて現実に戻ってきたという感覚をシーンの変わり目で感じることができます。

話はスニッファーに戻ります。
冒頭の色々な演出から、このカメラワークもなんか文法あるんだろうなあ、と思って注意してたら、井川遥の女医さんとのシーンでは手持ちではなくなりました。完全な固定ではくほんのわずかにドリー(パン)やズームを入れて、他の手持ちシーンとの整合と差異を入れているようです。
なるほど、このドラマでのカメラワークは人物の感情や精神状態とリンクさせてるのだな。このカメラワークの文法を繰り返しいくうちに、視聴者は無意識にカメラワークからシーンにおける演者の感情を共感できるようになるわけか。

主人公の研究テーマは「感情は匂いとして伝わる」です。ならばドラマの演出として、無意識下に情報を伝えるカメラワークによる感情の表現というはありかもかれない。

・・・と、仮説を立てて観てたんですが、なーんか演出に一貫性がないような。カメラワークにも特に文法は設定されてないみたい。

シーン毎に今風の演出を入れて海外ドラマっぽくしてただけなのかな・・・

あ、ドラマ自体は普通に面白いですよ(^_^)
ただ超嗅覚という設定の活かし方がわりと普通なのが物足りないです。

(ドラマのクレジットでbased onなんちゃらって出てるのは、このドラマがウクライナのテレビドラマを翻案してるからだったのですね。海外ドラマっぽい雰囲気は元のドラマに影響受けてるのかな)